そもそもリン酸処理って何?
金属板、特に鉄板の表面加工の一つとして、「リン酸処理」というものがあります。これはリンのオキソ酸(酸化物と水が結合した組成を持つ酸)の一種であるオルソリン酸の、中性の環境で重金属イオンと難溶性の塩を作るという性質を利用し、金属板表面にリン酸塩の薄い皮膜を形成するという処理です。この処理によって金属板表面に塗装下地を作ったり、処理方法によっては錆防止を行ったりすることができます。リン酸塩に含まれる金属イオンの種類によって処理の名称が異なり(名称中の金属イオンが含まれない場合もあります)、リン酸鉄処理、リン酸亜鉛処理、リン酸亜鉛カルシウム処理、リン酸マンガン処理等が知られています。これらは基本的に鉄板に対して適応される処理で、それぞれの処理方法は異なる特徴を持ち、例えばリン酸マンガン処理はこの中で最も硬度が高く油脂の保持に優れるのでベアリング等に用いられます。
リン酸処理に欠かせない消泡剤って?
消泡剤というのはその名の通り反応時に液体中に生じる気泡を消すための薬剤です。どうして気泡が形成されてしまうのかというと、液体の表面張力が強いことで内部に気体が溜まっても表面が割れず、排出することができない状況が生じるからです。つまり気泡を消すにはこの表面張力を下げる必要があります。リン酸処理を行う際、リン酸と金属イオンとの反応で水素が発生し、リン酸塩被膜中に気泡を形成してしまいます。気泡が生じてしまうと塗装下地や錆防止加工としての機能を果たせない、表面が滑らかでない状態になります。この予防として薬剤中に消泡剤を混ぜることで、リン酸処理の本来の仕上がりと用途を満たすことができます。
消泡剤は、液体にできた泡の発生を防止するための添加物です。成分にはアルコール誘導体やシリコンなどが含まれています。